個人民事再生は、自己破産のようにすべての借金が免除されるのではなく、債務者の状況に合わせて決められた返済額を3年(特別の事情がある場合5年)で弁済し、残りの借金が免除されるという制度です。
個人民事再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生という2種類の手続きがあります。
そして、認可により圧縮される最低弁済額というのは両者で異なります。
小規模個人再生は「負債の総額の一定割合」と「清算価値総額」のうち高い方が最低弁済額になります。
給与所得者等再生は「負債の総額の一定割合」と「清算価値総額」に加えて「可処分所得」を比較し、一番高いものが最低弁済額となります。
そのため、「可処分所得」の基準が加わる分、給与所得者等再生の方が小規模個人再生より、最低弁済額が高くなる可能性があります。
◇負債の総額の一定割合
まず最低弁済額を定めるにあたって1つ目の基準が負債の総額の一定割合です。ほとんどはこの基準により最低弁済額が定まります。その額は以下の基準で定められています。
債務の総額 | 最低弁済額 |
100万円未満 | 全額 |
100万円以上~500万円未満 | 100万円 |
500万円以上~1500万円未満 | 債務額の5分の1 |
1500万円以上~3000万円未満 | 300万円 |
3000万円以上~5000万円以下 | 債務額の10分の1 |
例えば債務の総額が500万円の場合、弁済する最低弁済額は100万円、月々の弁済額は約2万8000円となります。
なお、住宅ローン債務の弁済は、この額には含まれておりませんので、その分を合わせて支払うことが可能かどうかを検討する必要があります。
◇清算価値総額
財産をお持ちの場合、清算価値保障の原則から、最低弁済額の基準額と清算価値総額の高い方が返済額となります。
財産がたくさんあるのに、それ以上に借金が圧縮されるのは債権者との関係で公平ではないため設けられた基準です。
財産には以下のようなものが含まれます。
■現金
■預貯金
■財形貯蓄
■退職金見込額の8分の1
■有価証券
■不動産の時価総額
■自動車、二輪車等の時価
■その他高級品の時価総額 など
◇可処分所得
給与所得者等再生はさらに可処分所得の基準が加わります。計算が細かいので割愛しますが、要は給料から政令で定められた生活費等を引いて、どれだけ毎月お金が余るかという基準です。
この余る額(可処分所得の2年分)が多いのならば、生活に余裕があることになります。そのため、たとえ「負債の総額の一定割合」や「清算価値総額」によれば負債の総額がたとえば100万円まで圧縮されるとしても、そこまで圧縮することは認めませんよという趣旨です。
◇どちらの手続きを選択すべきか
上記のように小規模個人再生の方が「可処分所得」の要件がないためお勧めです。
例外としては、大口の債権者が個人再生に反対している場合です。
小規模個人再生では、債権者の半数以上が反対するか、反対した債権者のもつ債権額が債務総額の半数を超える場合には認可されないからです。
しかし、ほとんどのケースで債権者が反対するということはありません(反対すれば債務者としては自己破産をするという事になり、債権回収額がさらに減ってしまうからです)。
そのため、小規模個人再生の手続きを選択することが実務では一般的となっています。
◆解決事例
Aさん 40代
債権者5社 債権総額 約500万円
債権者名 | 借金額 | 民事再生認可後 | 月々の返済額 |
A社 | 100万円 | 20万円 | 5600円 |
B社 | 50万円 | 10万円 | 2800円 |
C社 | 80万円 | 16万円 | 4500円 |
D社 | 200万円 | 40万円 | 11000円 |
E社 | 70万円 | 14万円 | 3900円 |
※開始決定までの利息・遅延損害金が付加されるため、ちょうど5分の1になるわけではありません。
◇最長弁済期間
最長弁済期間というのは、個人民事再生において弁済の期限を最大でどのくらいまで延ばすことができるかという期間です。
再生計画認可の決定の確定の日から原則3年、特別の事情(※1)がある場合にのみ最長5年となっています。
※1 再生債務者の収入が少なく、最低弁済額を3年間で完済することが難しい場合など